第一回「やがて君になる」
唐突に始めましたが、まずはまくらとなるお話を。
私は昔から読書感想文が苦手な子どもでした。
本自体、本格的に読み始めて好きになったのは中学生からだったんですが、読書感想文の全盛期は小学校だと思う訳で、まあ毎年地獄だったんですよね。
確か、読書感想文が夏休みの宿題に仲間入りしたのは、3年生ぐらいからだったと思います。
で、本屋には読書感想文用の課題図書が並ぶようになる訳で、まあそれを読んで感想文を書け、と。出版社と教育機関がグルになってるんじゃないか、というような空気が形作られる訳です。
ですがまあ、これは地雷です。大人になった今なら、勝手に出版社が鼻をほじりながら「まま、小学3年生にはこれぐらいの本でええやろ」と選定した本をいきなり買ってきて、それで感想文を書けとなっても、書ける訳ないんですよ。
だって本って、文章って、好きなものを読むものじゃないですか。
国語のテストの問題ならともかく、本来的に読書は楽しんでするものな訳で、誰かに決められた課題図書を読んでも、それを楽しめるとは限らない。そして、それで感想を書けなんて、もっと無理な話です。
ですが、本屋がそうしろと言っているので、大人が鼻をほじって選んだ本を、鼻を垂らした子どもが手にとって、なんとか書こうとする訳です。
が、話自体よくわからなかったりする訳ですよ。だって、興味ないから。興味ないけど義務感だけで書かなきゃ、となってやってるから、本の深い内容にまで踏み込まない。踏み込めない。
もちろん、幼さゆえに理解できない部分は多いでしょう。でも、楽しいのなら、頑張って読み込もうとする。たとえ国語のテスト的には間違いでも、自分なりの解釈をしようとするんです。できるんです。子どもでも“感想”を持つぐらいはできる。
ところが、興味関心のない本を機械的に選び、機械的に感想文を書くから、あらすじで半分ぐらいの文量を費やし、後はなんかいい感じに作文を書く。
確か4年ぐらいの時の課題図書は、息子だか孫だかが死んだ老女が出てきていたので「かわいそうだなぁ。と思いました」的なことを書いてたと思います。どこがどう可哀想とか、もしも自分が息子の方なら、とか、いくらでも書きようがあったと、今なら思いますけどね。それは大人の理屈です。小賢しさです。
子どもは残酷なほど素直に自分の気持ちを書く訳で、まあそれを大人が読めば「ああ、おもしろくなかったんだな。無理やり字数を埋めたんだな」と見透かされる程度のおそまつな文章です。
一応、小学生の頃から「千代田くんは作文が上手いねぇ。皆の前で朗読するねぇ」的なことをよく言われてたので、才能的なものはあったんだと思いますけどね。読書感想文については、ハナタレ坊主相応の力しか発揮できてなかったでしょう。
なので、感想文というのはどうにも苦手だという意識が今に至るまでちょっとあります。
でも今はSNS時代。SNSに映画とかマンガとかアニメとかの感想をちょこちょこーっと書くのがアタリマエになっています。
私もその潮流の通り、ぺっぺけぺーと書いたりしてる訳ですが、これが中々楽しい。
昔はブログなんかも書いていましたが、ツイッターはよりライトに書くことができる。正につぶやき。らくがき。
だからこそ、ナマの推敲もしてない、自分自身でもほとんど読み返さない文章を投げて、埋もれて、でもそれが他の誰かに見つけられて。楽しんでもらえたり、逆にお気持ちが届いたりする。でも私はフォローしてない人のリプは見えないようにしてるので、気づかないし見ない……。
不思議な時代になったものです。
きっと私みたいに読書感想文が嫌いな子どもは多かったはずなのに、今の子どもはそれが読書感想文のようなものだと気づかないまま、ツイッターに週刊誌のネタバレを書いたりしている訳です。やめれ。
とにかく、そういう訳で自分なりの感想を書くことへの苦手意識はかなり薄れてきて、それどころか積極的に形にしたい、とすら思えるようになってきました。
ただ、世の中でありがたがられる「感想」とは、つまりそれは「レビュー」と言い換えられます。スタァライトの方じゃないですよ。それはレヴュー。
つまり、ある製品の使用者、ある作品の視聴者の忌憚なき意見ってやつッス、を聞いて、自分もその商品を買ってみようかな、とかそういう感じの指針にする。役立つ批評。そういう感想こそがまとめられて価値のあるものであり、うだうだ感想を垂れ流すだけなら、SNSでいい訳です。
そんな訳あるかよ!
はい、来ました。インターネット老人会所属のマサキくんの意見です。これこそ忌憚なき意見ってやつッス。
ブログ時代の人間からすれば、もしかするとどこぞの企業から金をもらって書いてるかもしれないレビューなんてくそくらえじゃ!
こちとら嫌儲も経由してるんじゃ、んな金にまみれた実用的な感想なんて読みたかないね!
私が読みたいし書きたいのは、実用的な感想ではなく、楽しんでいる人の楽しいという感想です。
何かと比較して、ここはこうだけど、ここはそうだねぇ……まあ、いい感じちゃいまんの、じゃあないんです。
「いいよね……」っていう感想を見て、一人で「いい……」ってなりたいんです。
そこで、「オトナの感想文」と題した連載……ともまた違う、不定期なものになりますけど、文章をこのサイトに掲載しようと思いました。
ここでは、楽しんだ感想を楽しんだままに書きます。
残念ながら、基本的に褒めちぎることしかしないため、購入の参考とかにはなりそうにありません。
ですが、愛を語りますので、既にその作品が好きな人にとっては「いい……」と呟いてもらえる内容になっているはずです。
また、知らない人にとっても「そんなにいいなら、ちょっと試してみるかな?」と思ってもらえるかもしれません。そうなったらこっちのもんです。
ブヘヘヘヘ、また一人、沼に沈めてやったわ!
笑いが止まりません。お前も沼に落ちるんだよ!
とはいえ、色々と自由に書くので、ネタバレについては特に考慮いたしません。
というか、ネタバレを考慮したうっすい記事なんて、どうでもいいんですよ。んなもんいらねぇ。
なので、ネタバレを受け入れられる人か、すぐに忘れられる。あるいは過程を楽しめるからいい、という人に向くと思います。
でもまあ、ここ、同人サークルのサイトですよ。万人受け狙ったいい子ちゃんサイトじゃないんです。
ルール無用ぐらいでいいですよね。同人はルール無用だろ(※あります)。