●台本●【読み聞かせ】上品な妹の読み聞かせ『ヘンゼルとグレーテル』前編

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 お嬢様な妹に童話を読み聞かせてもらう音声です
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02【読み聞かせ】上品な妹の読み聞かせ『ヘンゼルとグレーテル』前編.txt

 

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    ■扉が開く音

    ●小声で
     お兄様、失礼いたします

    ●申し訳なさそうに
     こんな夜分遅くに申し訳ございません
     どうしても寝る前にお兄様のお顔が見たくなってしまって……

    ◆少しの間

    ●意外そうに
     えっ?お兄様も私(わたくし)の顔を見たかったと?

    ●嬉しそうに
     そうでしたか……それは、とても嬉しいです

    ◆少しの間

     あっ、はい。実はお兄様のご迷惑でないのであれば、この本を読ませていただき、共に楽しむ事ができれば、と……
     本の読み聞かせだなんて、小さな子どもにするみたいですよね
     でも、どうにも寝苦しいもので……こんな夜は幼い頃にお兄様にしていただいたように、絵本を読めば眠れると思うのです
     えっと……よろしいでしょうか?

    ◆少しの間

    ●嬉しそうに
     ありがとうございます……!では、お兄様のベッドに失礼しますね

    ■ベッドに横になる音

    ●嬉しそうに
     うふふっ……最後にこうして同じベッドで眠ったのはいつの事でしょうか?
     とっても嬉しいです

     では、お読みしますね。拙い(つたない)朗読でしょうが、どうぞご容赦くださいませ

     ヘンゼルとグレーテル

     貧しい木こりの男が、大きな森の近くに小屋を持って、おかみさんと二人の子どもとで暮らしていました。
     二人の子どもの内、男の子がヘンゼル、女の子がグレーテルといいました。
     しがなく暮らして、ろくろく歯に当たる食べ物を、これまでも食べずに来たのですが、ある年、国じゅうが大ききんで、それこそ、日々のパンが口に入らなくなりました。
     木こりは晩、寝床に入ったものの、この後、どうして暮らすか考えると、心配で心配で、ごろごろ寝返りばかりして、ため息混じりに、おかみさんに話しかけました。

    ●木こり(父親)
     俺たち、これからどうなると言うんだ
     可哀想に、子どもらをどうやって食わしていくか
     何しろ、肝心、養ってやっている俺たち二人の食う物がない始末だ

    ●母親
     だから、お前さん、いっそこうしようじゃないか

     と、おかみさんが答えました。

    ●母親
     明日の朝、のっけに、子どもたちを連れ出して、森の奥の奥の、木深い(こぶかい)所まで行くのだよ
     そこで、たき火をしてやって、めいめい一欠(ひとかけ)ずつパンをあてがっておいて、それなり私たち、仕事の方へすっぽぬけて行って、二人はそっくり森の中に置いてくるのさ
     子どもらに帰り道が見つかりっこないから、それで厄介が抜けようじゃないか

    ●木こり
     そりゃあ、おめえ、いけねえよ

     と、木こりが言いました。

    ●木こり
     そんなこたあ、俺にはできねえよ
     子どもらを森ん中へ置き去りにするなんて、どうしたって、そんな考えになれるものかな
     そんなことしたら、子どもら、すぐと森のけだものがでてきて、ずたずたにひっつぁいてしまうにきまってらあな

    ●母親
     やれやれ、お前さん、いいバカだよ

     と、おかみさんは言いました。

    ●母親 かつえ死に(じに)……飢え死に のこと
     そんなことを言っていたら、私たち四人が四人、かつえ死にに死んでしまって、後は棺桶の板を削ってもらうだけが、仕事になるよ

     こうおかみさんは言って、それからも、述べつまくし立てて、否応なしに、亭主をうんと言わせてしまいました。

    ●木こり
     どうもやはり、子どもたちが可哀想だなあ

     と、亭主はまだ言っていました。
     二人の子どもたちも、お腹が空いて、よく寝つけませんでしたから、継母が、おとっつぁんに向かって言っていることを、そっくり聞いていました。
     妹のグレーテルは、涙を出して、しくんしくんやりながら、兄さんのヘンゼルに向かって

    ●グレーテル
     まあどうしましょう
     あたしたち、もうダメね

     と、言いました。

    ●ヘンゼル
     しッ、黙ってグレーテル

     と、ヘンゼルは言いました。

    ●ヘンゼル
     お騒ぎでない、大丈夫
     僕、きっとよくやってみせるから

     こう妹をなだめておいて、やがて、親たちが寝静まると、ヘンゼルはそろそろ起き出して、上着を被りました。
     そして、表の戸の下だけ開けて、こっそり外へ出ました。
     ちょうどお月様が、昼のように明るく照っていて、家の前に敷いてある白い小砂利が、それこそ銀貨のように、きらきらしていました。
     ヘンゼルは屈んで、その砂利を上着の隠しいっぱい、詰まるだけ詰めました。
     それから、そっとまた、戻って行って、グレーテルに

    ●ヘンゼル
     いいから安心して、ゆっくりおやすみ
     神様がついていてくださるよ

     と、言い聞かせて、自分もまた、床に潜り込みました。
     夜が明けると、まだお日様の上がらない内から、もうさっそく、おかみさんは起きて来て、二人を起こしました。

    ●母親
     さあ、起きないか、のらくら者だよ
     起きて森へ行って、焚き木を拾って来るのだよ

     こう言っておかみさんは、子どもたちめいめいに、一欠ずつパンをわたして

    ●母親
     さあ、これがお昼だよ
     お昼にならない内、食べてしまうのではないぞ
     もう後は何にももらえないからよ

     と、言いました。
     グレーテルは、パンを二つともそっくり前掛の下にしまいました。
     ヘンゼルは、隠しにいっぱい小石を入れていましたからね。
     そのあとで、親子四人揃って森へ出かけました。
     しばらく行くと、ヘンゼルがふと立ち留まって、首を伸ばして、家の方を振り返りました。
     しかも、そんなことをなんべんもなんべんもやりました。
     おとっつぁんがそこで言いました。

    ●木こり
     おい、ヘンゼル、何をそんなに立ち留まって見ているんだ
     うっかりしないで、足元に気をつけろよ

    ●ヘンゼル
     なあに、おとっつぁん

     と、ヘンゼルは言いました。

    ●ヘンゼル
     僕の見ているのはね、あれさ
     ほら、あすこの屋根の上に、僕の白猫が上がっていて、あばよしているから

     すると、おかみさんが

    ●母親 煙出し……えんとつのこと
     バカ、あれがお前の子猫なもんか、ありゃあ、煙出し(けむだし)に日が当たっているんじゃないか

     と、言いました。
     でも、ヘンゼルは子猫なんか見ているのではありません。
     本当はその間に、例の白い小砂利をせっせと隠しから出しては、道に落とし落とししていたのです。
     森のまん中ごろまで来たとき、おとっつぁんは言いました。

    ●木こり
     さあ、子どもたち、焚き付けの木を拾っておいで
     みんな、寒いといけない
     おとっつぁん、焚き火をしてやろうよ

    ● そだ……枝のこと
     ヘンゼルとグレーテルとで、そだを運んで来て、そこに山と積み上げました。
     そだの山に火がついて、ぱあっと高く、炎が燃え上がると、おかみさんが言いました。

    ●母親
     さあ、子どもたち、二人は焚き火の傍であったまって、私たち森で木を切って来る間、大人しく待っているんだよ
     仕事が済めば戻ってきて、一緒に連れて帰るからね

     ヘンゼルとグレーテルとは、そこで、焚き火に当たっていました。
     お昼になると、めいめいあてがわれた、パンの小さな欠片を出して食べました。
     さて、その間も始終、木を切る斧の音がしていましたから、おとっつぁんは、すぐと近くで仕事をしていることとばかり思っていました。
     でも、それは斧の音ではなくて、おとっつぁんが一本の枯れ木に、枝をいわいつけておいたのが、風でゆすられて、あっちへぶつかり、こっちへぶつかりしていたのです。
     こんな風にして、二人はいつまでも大人しく待っている内、ついくたびれて、両方の目がとろんとしてきて、それなりぐっすり、寝てしまいました。
     それで、やっと目が覚めてみると、もうすっかり暮れて、夜になっていました。
     グレーテルは泣き出してしまいました。

    ●グレーテル
     まあ、私たち、どうしたら森の外へ出られるでしょう

     と、グレーテルは言いました。
     ヘンゼルは、でもグレーテルをなだめて

    ●ヘンゼル
     なあに、しばらくお待ち。お月様が出てくるからね
     そうすればすぐと路(みち)が見つかるよ

     と、言いました。
     やがて、まんまるなお月様が、高々と上りました。
     そこで、ヘンゼルは小さい妹の手をひいて、小砂利を落とした後を、辿り辿り行きました。
     小砂利は、吹き上がって来たばかりの銀貨みたいに、ぴかぴか光って、路しるべしてくれました。
     一晩中、歩き通しに歩いて、もう夜のしらしら明けに、二人はやっとおとっつぁんの家に帰って来ました。
     二人が表をこつこつと叩くと、おかみさんが戸を開けて出てきました。
     そして、ヘンゼルとグレーテルの立っているのを見ると

    ●母親
     このろくでなしめら、いつまで森ン中で寝こけていたんだい
     お前たち、もう家に帰るのがいやになったんだと思っていたよ

     と、言いました。
     おとっつぁんの方は、でも、ああして子どもたち二人っきり、置き去りにして来たものの、心配で心配でならなかったところでしたから、よく帰って来たと言って喜びました。
     その後、もうほどなく、家中また八方ふさがりになりました。
     子どもたちが聞いていると、夜遅く、寝ながらおっかさんが、おとっつぁんにむかって、

    ●母親
     さあ、いよいよ何もかも食べ尽くしてしまったわ
     天にも地にもパンが半きれ、それも食べてしまえば、歌もおしまいさ
     こうなりゃどうしたって、子どもらを追い出す他はないわ
     今度は森のもっと奥まで連れ込んで、もう、とても帰り道のわからないようにしなきゃダメさ
     どうしたって、他に私たち助かりようがないからね

     こんな事を言われて、亭主は胸にぐっと来ました。そして

    ●木こり
     (そんなくらいならいっそ、てめえ、しまいに残った自分のぶりの一欠を、子どもたちに分けてやっちまうのがましだ)

    ● あくぞもくぞ……人の欠点を並べ立てること
     と、考えました。
     それでもおかみさんは、亭主の言うことをまるで耳に入れようともしません。
     ただもういきりたって、あくぞもくぞ並べ立てました。
     それは誰だって、いったんA(アー)といってしまえば、あとはB(ベエ)と続けなければならなくなるので、この亭主も一度おかみさんの言うままになったからは、今度も、その通りにしなければならなくなりました。
     ところで、子どもたちはまだ目が開いていて、この話を残らず聞いていました。
     そこで、大人たちの寝てしまうのを待ちかねて、ヘンゼルは起き上がると、外へ飛び出して、この前のように小砂利を拾いに行こうとしました。
     でも今度は、おかみさんが戸に、ぴんと、錠を下ろしてしまったので、ヘンゼルは出ることができなくなりました。
     ヘンゼルは、それでも、小さい妹をなだめて、

    ●ヘンゼル
     グレーテル、お泣きでない、ね
     安心してお休み
     神様がきっとよくしてくださあるから

     と、言い聞かせました。
     あくる日は、朝っぱらからもう、おかみさんはやって来て、子どもたちを寝床から連れ出しました。
     子どもたちは、めいめいパンの欠片を一つずつもらいましたが、それは先のよりも、よけい小さいものでした。
     それをヘンゼルは、森へ行く道みち、隠しの中でぼろぼろに崩しました。
     そして、おりおり立ち留まっては、その崩したパンくずを、地びたに落としました。

    ●木こり
     おい、ヘンゼル、なんだって立ち留まって、きょろきょろ見ているんだな

     と、おとっつぁんが言いました。

    ●木こり
     さっさと歩かないか

    ●ヘンゼル
     僕、僕の小鳩を、ちゃんと見ているんだよ
     そら、屋根の上に止まって、僕にさよならしているんじゃないか

     と、ヘンゼルは言いました。

    ●母親
     バカ

     と、おかみさんはまた言いました。

    ●母親
     あれがなんで鳩なもんか
     あれは朝日が、煙出しの上で、きらきらしているんだよ

     ヘンゼルは、それでもかまわず、パンくずを道の上に落とし落としして、残らず失くしてしまいました。
     おかみさんは、子どもたちを、森のもっともっと深く、生まれてまだ来たことのなかった奥まで、引っぱって行きました。
     そこで今度も、またじゃんじゃん焚き火をしました。
     そしておっかさんは

    ●母親
     さあ、子どもたち、二人ともそこにじっといればいいのだよ
     くたびれたら少し寝ても構わないよ
     私たちは森で木を切って来て、夕方、仕事がおしまいになれば戻って来て、一緒に家に連れて帰るからね

     と、いいました。
     お昼になると、グレーテルが自分のパンを、ヘンゼルと二人で分けて食べました。
     ヘンゼルのパンは道にまいて来てしまいましたものね。
     パンを食べてしまうと、二人は眠りました。
     そのうちに晩も過ぎましたが、可哀想な子どもたちの所へ、誰も来る者はありません。
     二人がやっと目を開けた時には、もう真っ暗な夜になっていました。
     ヘンゼルは、小さい妹を労りながら

    ●ヘンゼル
     グレーテル、まあ待っておいでよ
     お月様が出るまでね
     お月様が出りゃあ、こぼしておいてパンくずも見えるし、それを探して行けば、家へ帰れるんだよ

     と、言いました。
     お月様が上がったので、二人は出かけました。
     けれど、パンくずは、もうどこにも見当たりません。
     それは、森や野を飛び回っている、何千とも知れない鳥たちが、みんなつついて持って行ってしまったのです。
     それでも、ヘンゼルはグレーテルに

    ●ヘンゼル
     なあにその内、道が見つかるよ

     と、言っていましたが、やはり、見つかりませんでした。
     夜中じゅう歩き通して、あくる日も朝から晩まで歩きました。
     それでも、森の外に出ることができませんでした。
     それになにしろ、お腹が空いてたまりませんでした。
     地びたに出ていた、草莓の実を、ほんの二つ三つ口にしただけでしたものね。
     それで、もうくたびれきって、どうにも足が進まなくなったので、一本の木の下にごろりとなると、そのままぐっすり寝こんでしまいました。

     さてさて、ヘンゼルとグレーテルはどうなってしまうのでしょう?

    ●嬉しそうに
     ふふっ、もう何度も読んでいて、すっかり内容を覚えているお話でしたが、改めて声を出して読んでみると不思議な感じがしますね

    ◆少しの間

    ●眠そうに
     さて、まだお話は半分ぐらいですが、もう眠くなってしまいましたわ
     お兄様。今夜はこのまま寝てしまってもよろしいでしょうか?

    ◆少しの間

    ●意外そうに
     あら、お兄様。急にお笑いになって、どうされました?

    ●恥ずかしそうに
     やはり、こんな歳になって一緒に寝るなんて恥ずかしいでしょうか……

    ◆少しの間

    ●意外そうに
     えっ、幼い頃もこのお話を読んで怖くなって、一緒に眠った?

    ●昔を懐かしむように
     そうでしたね……当時は頼りになるお兄様をヘンゼルに
     そして、お兄様に頼り切りの私をグレーテルに投影してお話を読んでいました
     なのでいつか、私もお父様やお母様に捨てられてしまうのでは、と不安でしたね

     思えば、どうしてこんなに母親が冷たいのかと思いましたが、ヘンゼルとグレーテルの産みの母ではなく、継母だったのですね
     でも、私たちが幼い頃は、お母様が体調を崩されていて、ほとんどメイドに育ててもらったので、境遇も似ていたのかもしれませんね
     もちろん、メイドたちは本当に私たちを大切にしてくれましたが

    ●あくび
     ふぁっ……

    ●恥ずかしそうに
     うぅっ、はしたないですわ……

     それでは、おやすみなさい。お兄様

    ●眠そうに
     お話の続きはまたの機会に……すぅっ……

    このシナリオは「青空文庫」様の以下のページのデータを元に製作しました
    台本として読みやすいよう、改行を工夫したり、ひらがなを漢字に変換するなどはしていますが、内容自体の改変はございません
    https://www.aozora.gr.jp/cards/001091/card42315.html

    「ヘンゼルとグレーテル」
    グリム兄弟
    楠山正雄訳

    底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店

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