●台本●【読み聞かせ】静かな図書委員の読み聞かせ『しっかり者のすずの兵隊』

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 静かで少し毒舌な後輩に童話を読み聞かせてもらう音声です
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04【読み聞かせ】静かな図書委員の読み聞かせ『しっかり者のすずの兵隊』.txt

 

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 先輩、図書室を利用されるなんて珍しいですね

◆少しの間

●少し嬉しそうに
 いえ、嫌味ではありません
 むしろ、先輩も読書の楽しさに目覚めたのでは、と嬉しくて

◆少しの間

●がっかりして
 ああ、授業の調べ物があったんですね
 そんな所だとは思っていましたが……

 それで、探したい本の場所はおわかりですか?

◆少しの間

 はい、わからないんですね。それも察していました
 図書委員や先生がきちんと本を排架(はいか)していますが、全く知らない人にはむしろわかりづらいですよね
 さて、先輩。お探しの本は私がご用意してもいいですよ
 ただし、交換条件があります
 先輩に本、特に物語に興味を持っていただくため、一冊だけ本の読み聞かせをさせてください

◆少しの間

 そんなに長いお話ではありません。有名な童話ですから
 お時間は取らせませんし、先輩はただ読み聞かす内容を聴いていればいいんです
 難しいことではないでしょう?
 ……でもまあ、最後にちゃんと聴いてくれていたのか、テストはさせてもらいますが

◆少しの間

●楽しそうに
 ふふっ、面倒くさいのでやめておきます?
 でも、一人で探していては日が暮れてしまいますよ?

◆少しの間

●楽しそうに
 はい、他に選択肢はないですよね
 どうぞ、こちらの椅子に座ってください

■椅子に座る音

 では、読み始めますよ

しっかり者のすずの兵隊

 ある時、二十五人すずの兵隊がありました。
 二十五人揃って兄弟でした。
 なぜならみんな同じ一本の古いすずのさじから生まれたからです。
 みんな銃剣を担いで、まっすぐに前を睨めていました。
 みんな赤と青の、それはすばらしい軍服を着ていました。
 寝かされていた箱のふたが開いて、この兵隊たちが、初めてこの世の中で聞いた言葉は

●男の子
 やあ、すずの兵隊だ

 ということでした。
 このこ言葉を言ったのはちいちゃな男の子で、言いながら、喜んで手を叩いていました。
 ちょうどこの子のお誕生日だったので、お祝いにすずの兵隊をいただいたのでございます。
 この子は早速、兵隊を机の上に並べました。
 それはおたがい生き映しに似ていましたが、中で一人が少し違っていました。
 その兵隊は一本足でした。
 こしらえる時、一番おしまいに回ったので、足一本だけすずが足りなくなっていました。
 でも、この兵隊は、他の二本足の兵隊同様、しっかりと、片足で立っていました。
 しかも、変わったお話がこの一本足の兵隊にあったのですよ。

 兵隊の並んだ机の上には、他にもたくさんおもちゃが乗っていました。
 でもその中で、いちばん目をひいたのはボール紙でこしらえた奇麗なお城でした。
 その小さなお窓からは、中の広間が覗けました。
 お城の前には、二、三本木が立っていて、湖のつもりのちいさな鏡をとりまいていました。
 蝋細工(ろうざいく)の白鳥が、上で泳いでいて、そこに影を映していました。
 それはどれもみんな、かわゆくできていましたが、でもその中で、いちばん可愛らしかったのは
 開かれているお城の戸口のまん中に立っている小さい娘でした。
 娘はやはりボール紙を切り抜いたものでしたが、それこそ涼しそうなモスリンのスカートをつけて
 ちいさな細い青リボンを肩に結いつけているのが、ちょうど肩かけのようにみえました。
 リボンのまん中には、その子の顔全体ぐらいあるぴかぴかの金ぱくがついていました。
 この小さな娘は両腕を前へ伸ばしていました。
 それは踊ッ子(おどりっこ)だからです。
 それから片足をずいぶん高く上げているので、すずの兵隊には、その足の先がまるで見えないくらいでした。
 それで、この子もやはり片足ないのだろうと思っていました。

●兵隊
 あの子はちょうど俺のおかみさんにいいな

 と、兵隊は思いました。

●兵隊
 でも、身分がよすぎるかな
 あの娘はお城に住んでいるのに、俺はたった一つの箱の中に、しかも二十五人一緒に放り込まれているのだ
 これではとても狭くて、あの子に来てもらっても、いる所がありはしない
 でも、どうかして近づきにだけはなりたいものだ

 そこで兵隊は、机の上に乗っている嗅ぎタバコ箱の後ろへ、ごろりと仰向けにひっくり返りました。
 そうしてそこから見ると、可愛らしい娘の姿が楽に見えました。
 娘は相変わらずひっくり返りもしずに、片足でつり合いをとっていました。
 やがて晩になると、他のすずの兵隊は、残らず箱のなかへ入れられて、この家の人たちもみんな寝に行きました。
 さあ、それからがおもちゃたちのあそび時間で、「訪問ごっこ」だの、「戦争ごっこ」だの、「舞踏会」だのが始まるのです。
 すずの兵隊たちは、箱の中でガラガラ言い出して、仲間に入ろうとしましたが、ふたを開けることができませんでした。
 くるみ割はとんぼ返りをうちますし、石筆(せきひつ)は石盤の上を面白そうに駆け回りました。
 それはえらい騒ぎになったので、とうとうカナリヤまでが目を覚まして、一緒にお話を始めました。
 それがそっくり歌になっていました。
 ただいつまでも、じっとして一つ場所を動かなかったのは、一本足のすずの兵隊と、踊ッ子の娘だけでした。
 娘は片足のつまさきでまっすぐに立って、両手を前に広げていました。
 すると、兵隊も負けずに、片足でしっかりと立っていて、しかもちっとも娘から目を離そうとしませんでした。
 する内、大時計が十二時を打ちました。

 ぱん!

 いきなり嗅ぎタバコ箱のふたがはね上がりました。
 でも中に入っていたのは、嗅ぎタバコではありません。
 それは黒い小鬼でした。
 そら、よくあるバネじかけのびっくり箱だったのです。

●小鬼
 おいすずの兵隊、少し目を他へやれよ

 と、その小鬼がいいました。
 でも一本足の兵隊は聞こえない風をしていました。

●小鬼
 よし明日まで待ってろ

 と、小鬼は言いました。
 さて明くる朝になって子どもたちが起きてくると、一本足の兵隊は、窓の上に立たされました。
 ところでそれは黒い小鬼の仕業であったか、風が吹きこんで来たためであったか
 出し抜けに窓がばたんと開いて、一本足の兵隊は、三階からまっさかさまに下へ落ちました。
 どうもこれは酷い目に遭うものです。
 兵隊は、片足をまっすぐに空に向け、軍帽と銃剣を下にしたまま、敷石の間に挟まってしまいました。
 女中と男の子は、すぐと探しに下りて来ました。
 けれども、つい足で踏ん付けるまでにしながら、見つけることができませんでした。
 もし兵隊が大きな声で

●兵隊
 ここですよう

 とどなったら、見つけたかも知れなかったのです。
 けれども兵隊は軍服の手前、大きな声で呼んだりなんかしてはみっともないと思いました。
 する内、雨が降り出しました。
 雨しずくがだんだん大きくなって、とうとう本当のどしゃ降りになりました。
 雨が上がった時、二人町の子どもが出て来ました。

●子ども
 おい、ご覧よ。すずの兵隊がいるよ
 舟に乗せてやろう

 と、その一人が言いました。
 そこで二人は、新聞で紙のお舟を作りました。
 そしてすずの兵隊を乗せました。
 兵隊は新聞のお舟に乗ったまま、溝の中を流されていきました。
 二人の子どもは一緒について駆けながら、手を叩きました。
 やあ、大変。溝の中はなんてえらい波が立つのでしょう、流れの早いといったらありません。
 なにしろ大雨の後でした。
 紙の小舟は、上下に揺られて、時々くるくる激しく回りますと、すずの兵隊はさすがに震えました。
 でも、やはりしっかりと立って、顔色ひとつ変えず、銃剣肩に、まっすぐに前を睨んでいました。
 いきなりお舟は、長い下水の橋の下へ入っていきました。
 それで、箱の中に入っていた時と同様、まっ暗になりました。

●兵隊
 一体、俺はどこへ行くのだ

 と、兵隊は思いました。

●兵隊
 そうだ、そうだ
 これは小鬼のやつの仕業なのだ
 いやはや、情けない
 あの可愛い娘が、一緒に乗っていてくれるなら、この二倍も暗くても、ちっとも困りはしないのだが

 こう思っているところへ、ふと下水の橋の下に住む大きなどぶねずみが出て来ました。

●どぶねずみ
 おい、通行証はあるか

 と、ねずみは言いました。

●どぶねずみ
 通行証を出してみせろ

 でも、すずの兵隊はだんまりで、余計しっかりと銃剣を担いでいました。
 お舟はずんずん流れていきました。ねすみは後から追いかけて来ました。
 うッふ、ねずみはきいきい歯ぎしりして、わらくずや木切れに、どんなに呼びかけたことでしょう。

●どぶねずみ
 あいつをおさえろ。あいつをおさえろ
 あいつは通行税を払わない。通行証も見せやしない

 でも、流れはだんだん激しくなりました。
 やがて橋がおしまいになると、すずの兵隊は、日の目を見ることができました。
 でもそれといっしょにごうッという音が聞こえました。
 それは大胆な人でもびっくりするところです。
 どうでしょう、ちょうど橋がおしまいになった所へ、下水が滝になって、大きな掘割(ほりわり)に流れ込んでいました。
 それは人間が滝に押し流されると同じような危険な事になっていたのです。
 でももう止まろうにも止まれないほど近くまで来ていました。
 舟は、兵隊を乗せたまま、押し流されました。
 すずの兵隊は、でも一生懸命つッぱり返っていて、それこそまぶたひとつ動かしたとは家ません。
 お舟は三、四度、くるくると回って、舟べりまでいっぱい水が入りました。
 もう沈む他はありません。すずの兵隊は首まで水に浸かっていました。
 お舟はだんだん深く深く沈んでいって、新聞紙はいよいよぐすぐすに崩れて来ました。
 もう水は兵隊の頭を越してしまいました。
 その時兵隊は、可愛らしい踊ッ子のことを思い出して、もう二度と会うこともできないと考えていました。
 すると兵隊の耳にこういう歌が聞こえました。

 さよなら、さよなら、兵隊さん
 これでお前もおしまいだ

 ちょうどその時、新聞紙が破れて、すずの兵隊は水の中へ落ち込みました。
 ところがその途端、大きなお魚が来て、ぱっくり飲んでしまいました。
 まあ、そのお魚のお腹の中の暗いこと。
 そこは下水の橋下よりももっとまっ暗でした。
 それに中のせま苦しいといったらありません。
 でもすずの兵隊はしっかりと立って、銑剣肩につッぱり返っていました。
 お魚はあっちこっちと泳ぎ回りました。
 それは散々、めちゃくちゃに動き回った後、急に静かになりました。
 ふと、稲妻のようなものが、差し込んで来ました。
 かんかん明るい、昼中でした。
 誰かが大きな声で

●女中
 やあ、すずの兵隊が

 と言いました。
 お魚は捕まえられて、魚市場へ売られて、買われて、台所へ運ばれて、料理番の女中が大きな包丁で、お腹を裂いたのです。
 女中はその時、兵隊を両手で掴んでお部屋へ持っていきますと
 みんなは、お魚のお腹の中の旅をして来た、めずらしい勇士を見たがって騒いでいました。
 でもすずの兵隊はちっとも得意らしくはありませんでした。
 みんなは兵隊を机の上に乗せました。
 するとどうでしょう、世の中にはずいぶんな奇妙なことがあるものですね。
 すずの兵隊は、元いたその部屋へまた連れて来られたのです。
 兵隊はやはり、先の男の子に会いました。
 同じおもちゃがその上に乗っていました。
 可愛い踊ッ子のいる奇麗なお城もありました。
 娘はやはり片足で体を支えて、片足を空に向けていました。
 この子もやはりしっかり者の仲間なのでした。
 これがすっかりすずの兵隊の心を動かしました。
 で、もう少しですずの涙を流すところでした。
 でも、そんなことは男のすることではありません。
 兵隊は娘をじっと見ました。
 娘も兵隊の顔を見ました。
 けれどお互いになんにも物は言いませんでした。

 その時、小さい男の子の一人が、すずの兵隊を掴んで、いきなり暖炉(だんろ)の中へ投げ込みました。
 どうしてこんなことになったのか、きっと嗅ぎタバコの黒い小鬼の仕業に違いありません。
 すずの兵隊は赤々と光に包まれながら立っていました。
 その内、酷い熱さを感じて来ました。
 でもこの熱さは本当の火で熱いのか、心臓の中の血が燃えるので熱いのか、わかりませんでした。
 やがて体の色はすっかりはげてしまいました。
 でも、これも長旅の間で取れたのか、心の悲しみのためにはげたのか、それもわかりません。
 兵隊は踊ッ子の顔を見ました。
 娘も兵隊を見返しました。
 その内、体がとろけていくように思いました。
 でも、やはり銃剣肩に、しっかり立っていました。
 そのとき出し抜けに戸がばたんと開いて。
 吹きこんだ風が踊ッ子をさらいますと、それはまるで空を飛ぶ魔女のようにふらふらと空を飛びながら
 暖炉の中の、ちょうど兵隊のいる所へ、まっしぐらに飛び込んで来ました。
 途端に、ぱあっと炎が立って、娘は奇麗に焼け失せてしまいました。
 する内、すずの兵隊は、段々とろけて、小さな塊になりました。
 そうして、あくる日女中が、灰をかき出しますと、兵隊は小さなすずのハート形になっていました。
 けれども踊ッ子の方は、金ぱくだけが残って、それは炭のように真っ黒に焦げていました。

 いかがでしたか?

●楽しそうに
 ふふっ、その暗い顔を見るに、きちんと聞いてくれていたようですね

◆少しの間

 はい。このお話のように、アンデルセン童話は全体的に悲劇ばかりだと言われます
 また、他の童話に比べると創作が多いのも特徴ですね
 しかし、必ずしもこのお話は悲劇なのでしょうか?
 確かに、決して幸せではありません
 でも、大声で喚くことも、泣くこともしなかった“しっかり者の兵隊”は、最後に小さなハート型のすずの塊になっていました
 本当に最後の最後。想い人の踊り子と燃えながら、確かに恋を成就させたのだと、そう言うことができるのではないでしょうか
 今風に言えば、メリーバッドエンドと言える終わり方かもしれませんね
 それに、踊り子の方が真っ黒な金箔となって残っていた、というのも示唆的です
 兵隊はハートになったのに対し、踊り子は炭だった
 これはただの自然現象と言えるかもしれませんが、踊り子側に気持ちがなかった
 あるいは、強すぎる兵隊の恋の炎に焦がされてしまった。つまり、彼の道連れに焼かれてしまった、という見方もできると思います
 まあ、そこまで意地悪に考えず、最愛の人である兵隊と共に逝ったと捉えていいのかもしれませんが

◆少しの間

 私は童話には、必ず教訓が存在するものと思っています
 このお話の教訓は言うまでもありませんね
 兵隊は踊り子に恋するあまり、子鬼をぞんざいに扱ってしまった
 それゆえにその恐ろしい報復に遭ってしまったのです
 しかし、私は決してこのお話を悲劇だとは捉えていません
 強く想い、一心に恋い焦がれること。それ自体は決して間違っていないと思います

●愛おしそうに
 先輩。私も最後には身も心も溶けてしまう、そんな大恋愛をしたいものですね?

このシナリオは「青空文庫」様の以下のページのデータを元に製作しました
台本として読みやすいよう、改行を工夫したり、ひらがなを漢字に変換するなどはしていますが、内容自体の改変はございません
https://www.aozora.gr.jp/cards/000019/card42379.html

「しっかり者のすずの兵隊」
ハンス・クリスティアン・アンデルセン
楠山正雄訳

底本:「新訳アンデルセン童話集第一巻」同和春秋社

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