こちらの動画のシナリオを担当させていただきました!
今回は別に珍しくもないですが、純愛ラブラブの耳かき作品です!
うーん、お姉さんにこうやって耳かきをしてもらえる関係、いいですよね
いつもの作品よりも、ちょっとヒロインの年齢層が上めなのもまた、ちょっと新鮮でいいんじゃないでしょうか。人外系以外でのお姉さん系キャラというのは中々レアかな、と思います
聴いているこっちが恥ずかしくなってしまうぐらいのラブラブ、アツアツの関係でいいですよねぇ……本当に
まあ、全部妄想なんですけどね
私は基本、二次元作品。特にいわゆる「萌え系」(死語)は理想的な、それこそ男の願望のような都合のいい世界を割り切った上で作り出し、それが現実感に乏しいものだったとしても、それを大真面目に楽しむ。そういったコンテンツだと思っています
そのため、こういったタイプの耳かき音声作品って、理想的すぎて「そんなの現実にある訳ないじゃん!」と冷めた目で見てしまう人もいるんだろうな、とは思うんですが
「耳かきしてくれる彼女がいる」というのが100パーセント男の願望、妄想なのか、というとそれは結構乱暴な言い方なのではないかな、と思います
つまりは本作は、耳かきをしているヒロインの妄想99パーセントで進行しています
1パーセントの真実は「君」がぬいぐるみをヒロインにくれたという点だけ
残りは全て、ヒロインが思い描く通りの妄想です。彼女に恋人はいませんし、耳かきは人間ではなく、ぬいぐるみにしています
そういったことを日常的に繰り返していたため、かなりぬいぐるみも弱ってしまっていて、結果として最後に壊れてしまいます
しかし、彼女が見ていた「真実」は耳かきをしている恋人がいるというもの
それゆえに、「ぬいぐるみの死」は彼女の「恋人の死」であり
でも、ぬいぐるみを「君」がくれたという事実も確かに存在している訳で、彼女はまたぬいぐるみをもらいたがり、でも彼女と君は結婚を控えた関係であるという妄想も彼女の中に存在しているため、錯乱、混乱を極め……
犬塚様の作品で、結構な数のヤンデレを製作させてもらっていますが、本作はヤンデレから「もう一歩踏み出した」そんな世界を描いているのでは、と思います
悲しい狂気の作品と受け取られるのも、そんな彼女だからこそ強く抱きしめたいと思うのも、視聴された方次第でしょう
ヤンデレの愛情の向けられる方向が直接的な自分ではないため、ヤンデレが苦手な人も、ある意味で冷静に視聴することができるのではないか、とも考えています
今回のお話をいただけた時、私としては「上手く視聴者さんを騙せるかな……」というちょっとした不安と同時に、「こういうの、大学の時に見たぞ……!」と感じ、痺れるような感覚を覚えたのを今でも記憶しています
私は大学は芸大、文芸学科に通っていたのですが、そこでは何も文芸、文学だけに関することだけを勉強していたのではなく、必須、選択の教養科目を問わず、色々なことを勉強しました
私は結果的に文系ですが、理系にもかなり関心があったので、理科系の講義も色々と受けましたが、確か必修に「演劇論」の講義があったと思います
その中で、恐らくは教授の好みとして、野田秀樹や井上ひさしの作品を取り上げていたのですが、これもまた恐らくは教授の好みとして「観客が騙される作品」の映像を多く見ました
その中でも特に衝撃を受けたのが井上ひさしの『化粧』です
この舞台の強烈さはぜひ、ご自身で味わっていただきたいのですが、この流れで触れる関係でお察しかと思いますが「女性の思い込み」の作品です
役者は女性、たった一人。小道具も最小限。ただひたすらに、一人の女性が演じ続ける。シンプルだけど、強い強い力を持った舞台です
そしてこの作品は、2回見ることで完成する強烈な仕掛けを持っています
この印象を未だに鮮烈に覚えている私は、少しでもこの偉大な作品に近づこうと、今回のシナリオを書かせていただきました
結果的には、台本の力というよりは演者の力に頼るような形になってしまったと思うのですが、犬塚様の演技力によって完成するこの動画をお楽しみいただけたのであれば、幸いです