思いつきで書き始めてみたお話です。一応、シリーズの予定になります
時代考証とかは適当。なんとなく、時代劇的な台本って珍しくて面白そう、ということで書いてみました
本当に続いたシナリオはこちらです
シナリオをご利用いただく場合のご注意はこちらです

お目覚めですか、お侍さん
◆少しの間
驚かれるのも無理はありません。お侍さんは家の近くで倒れてらしたんですから
◆少しの間
はい。そこを私なりに介抱させてもらいました。刀とお荷物はあちらに……
●申し訳なさそうに
ただ、失礼ながらお荷物の中身を確認させていただいたのですが
◆少しの間
●少し慌てて
あ、えっと、私が気付いたのが朝の事でしたので、夜の間中、倒れられていたのなら、物盗りに遭っているのでは、と思いまして
そしたら実際、お金がほとんどなくなっていて
●悲しそうに
きっとお侍さんは私を疑われるでしょうが……
確かに私は両親もなく、こんなあばら家に暮らしている身です
ですが、死んだ両親から。そして、祖父母から言い伝えられた家訓として、誓って盗みはいたしません
◆少しの間
●驚いて
えっ……?初めからお金はほとんど残っていなくて、そのために行き倒れられたのですか?
そうでしたか……盗みに遭った訳ではなかったんですね
あの、よろしければお侍さんの事をお聞かせください
私では何の力にもなれません。それはわかっています
ですが、少しでも胸のつっかえは取れるのでは、と思いますので……
◆少しの間
そうでしたか。お家がお取り潰しに遭い、そのまま浪人の身に……
私はお侍さんの世界についてはわかりません。しかし、大変なご苦労をされているようですね
◆少しの間
いいえ、私は自分を不幸とは感じていません
確かに暮らしは厳しく、今日を生きるのでやっとです。明日も生きていられるかはわかりません
ですが、病気で死んだ両親がいなければ、私は生きていないんです
それなのに、私が生きていられる可能性がある。それだけでとてもありがたいことではありませんか?
◆少しの間
……無茶苦茶なことを言っている自覚はあります
でも、泣いても叫んでも、何かが変わる訳ではありませんから
私は私にできる仕事をやって、今日を生きていきます
◆少しの間
あの、少し怪我もされていたようですが、そちらのお加減はいかがでしょう?
薬なんて上等なものはありませんが、近くに薬草の生えた草原があるので、それをすり潰したものを塗らせてもらいました
◆少しの間
●少し微笑んで
はい、とっても臭いですよね。でも、ちょっとした切り傷なんかにはよく効くんですよ
お侍さんは……これから、どちらへ?
今の時代、お侍さんも仕事が減った、と聞いています
立派な刀をお持ちですから、それを活かせるお仕事があればいいんですが
◆少しの間
●少し驚いて
あ、あれは刀ではないんですか?
◆少しの間
そうでしたか。竹光(たけみつ)という竹で作った刀なんですね。道理で女の私でも持てた訳です
刀を質入れして、それでも生活に困り、住める場所を探していた、と……
あの、お侍さん。もしよろしければ、なんですが
私の家は町外れに、小さな畑を持っているんです
女の私一人で、管理するのは難しいので、今は遊ばせていて、荒れ果ててしまっているのですが
もしよろしければ、お侍さんがお使いになる、というのはいかがですか?
一応、私が地主ということになりますので、いくらかのお金はいただく、という形で……
そうすることができれば、私も生活が楽になりますし、お侍さんも日々の糧(かて)を得られるのではないかと
◆少しの間
はい。今から畑を耕しても、作物ができるのは早くても半年後
それまでは生きていられません
ですから、それまでは私がお世話させていただきます
実はほんの少しだけですが、まで売り物になるような物が残っているんです
両親がなけなしのお金で残してくれた、私の花嫁衣装なんですが
それを質に入れて、後は私がなんとか働いて、二人で半年後まで生きていけるようにしてみせます
●少し照れながら
ですから、お侍さん……その後は、私と夫婦になっていただけませんか?
無茶を言っているのはわかっています。ですが……
お侍さんを見つけた時、感じたんです
今までずっと変わらなかった私の人生が、変わり始めたんだと
私に全てが上手く務まるかはわかりません
ですから、半年後までは、私は地主、お侍さんは小作農さんです
●少し照れながら
その間だけ、お試しで……一緒に暮らしてはみませんか?