●台本●町娘とお侍さん ~ 出会い

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 思いつきで書き始めてみたお話です。一応、シリーズの予定になります
 時代考証とかは適当。なんとなく、時代劇的な台本って珍しくて面白そう、ということで書いてみました
 本当に続いたシナリオはこちらです

13町娘とお侍さん ~ 出会い.txt
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 お目覚めですか、お侍さん

◆少しの間

 驚かれるのも無理はありません。お侍さんは家の近くで倒れてらしたんですから

◆少しの間

 はい。そこを私なりに介抱させてもらいました。刀とお荷物はあちらに……

●申し訳なさそうに
 ただ、失礼ながらお荷物の中身を確認させていただいたのですが

◆少しの間

●少し慌てて
 あ、えっと、私が気付いたのが朝の事でしたので、夜の間中、倒れられていたのなら、物盗りに遭っているのでは、と思いまして

 そしたら実際、お金がほとんどなくなっていて

●悲しそうに
 きっとお侍さんは私を疑われるでしょうが……

 確かに私は両親もなく、こんなあばら家に暮らしている身です
 ですが、死んだ両親から。そして、祖父母から言い伝えられた家訓として、誓って盗みはいたしません

◆少しの間

●驚いて
 えっ……?初めからお金はほとんど残っていなくて、そのために行き倒れられたのですか?

 そうでしたか……盗みに遭った訳ではなかったんですね
 あの、よろしければお侍さんの事をお聞かせください
 私では何の力にもなれません。それはわかっています
 ですが、少しでも胸のつっかえは取れるのでは、と思いますので……

◆少しの間

 そうでしたか。お家がお取り潰しに遭い、そのまま浪人の身に……
 私はお侍さんの世界についてはわかりません。しかし、大変なご苦労をされているようですね

◆少しの間

 いいえ、私は自分を不幸とは感じていません
 確かに暮らしは厳しく、今日を生きるのでやっとです。明日も生きていられるかはわかりません
 ですが、病気で死んだ両親がいなければ、私は生きていないんです
 それなのに、私が生きていられる可能性がある。それだけでとてもありがたいことではありませんか?

◆少しの間

 ……無茶苦茶なことを言っている自覚はあります
 でも、泣いても叫んでも、何かが変わる訳ではありませんから
 私は私にできる仕事をやって、今日を生きていきます

◆少しの間

 あの、少し怪我もされていたようですが、そちらのお加減はいかがでしょう?
 薬なんて上等なものはありませんが、近くに薬草の生えた草原があるので、それをすり潰したものを塗らせてもらいました

◆少しの間

●少し微笑んで
 はい、とっても臭いですよね。でも、ちょっとした切り傷なんかにはよく効くんですよ

 お侍さんは……これから、どちらへ?
 今の時代、お侍さんも仕事が減った、と聞いています
 立派な刀をお持ちですから、それを活かせるお仕事があればいいんですが

◆少しの間

●少し驚いて
 あ、あれは刀ではないんですか?

◆少しの間

 そうでしたか。竹光(たけみつ)という竹で作った刀なんですね。道理で女の私でも持てた訳です
 刀を質入れして、それでも生活に困り、住める場所を探していた、と……
 あの、お侍さん。もしよろしければ、なんですが
 私の家は町外れに、小さな畑を持っているんです
 女の私一人で、管理するのは難しいので、今は遊ばせていて、荒れ果ててしまっているのですが
 もしよろしければ、お侍さんがお使いになる、というのはいかがですか?
 一応、私が地主ということになりますので、いくらかのお金はいただく、という形で……
 そうすることができれば、私も生活が楽になりますし、お侍さんも日々の糧(かて)を得られるのではないかと

◆少しの間

 はい。今から畑を耕しても、作物ができるのは早くても半年後
 それまでは生きていられません
 ですから、それまでは私がお世話させていただきます
 実はほんの少しだけですが、まで売り物になるような物が残っているんです
 両親がなけなしのお金で残してくれた、私の花嫁衣装なんですが
 それを質に入れて、後は私がなんとか働いて、二人で半年後まで生きていけるようにしてみせます

●少し照れながら
 ですから、お侍さん……その後は、私と夫婦になっていただけませんか?

 無茶を言っているのはわかっています。ですが……
 お侍さんを見つけた時、感じたんです
 今までずっと変わらなかった私の人生が、変わり始めたんだと
 私に全てが上手く務まるかはわかりません
 ですから、半年後までは、私は地主、お侍さんは小作農さんです

●少し照れながら
 その間だけ、お試しで……一緒に暮らしてはみませんか?

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