那由他のひめごと 1話

初仕事

 ガールズクラブ「At Tribute(アット・トリビュート)」について。
 当店はお客様に“理想の美少女”の自然体の姿をお届けする会員制クラブです。
 入場料をお支払いいただいたお客様は、女の子が日常を過ごす姿をお好きなだけお楽しみいただけます。
 もしも好みの女の子がいらっしゃいましたら、指名していただき、追加のプラン料金をお支払いいただくことで、女の子がお客様だけに魅力あふれる姿をお見せします。
 更に追加プランによっては、お客様の個室に女の子を招き、直接的な触れ合いもお楽しみいただけます。

 入会金 1000円
 入場30分 5000円 10分指名無料
 入場60分 9000円 20分指名無料
 延長30分 3000円

 指名5分 1500円
 指名10分 2500円

 個室10分 5000円
 個室20分 9000円

「5000円で私の1日の48分の1を売るシステム、か……」
 それを安いと見るのか、高いと見るのか。
 そういった業界に全く明るくない私にとって、わからない。
 ただ、指名を受けなかったとしても、私がただお店に出ているだけで、一人あたり結構な額が支払われるということはわかる。
 私はお金が欲しい訳ではないけど「目の保養」にそれだけのお金を払いたがる人がいるというのは……純粋に興味のある話ではあった。
 同時に、このお店。いわゆる“見学店”に属するこれが、一般的なそれとは異なり、いわゆる“オナクラ”要素を持っているということも理解している。
 つまり、客と本番はしないが、そのオナニーの手伝い……個室に入ってのコスプレやお触り。更に手コキといった性的なサービスもする、ということだ。
 10分でぱぱっと終わらせるにしても、それだけで10000円を支払うことになる。そちらの相場もわからないが、それなら風俗に行けばいいのでは、とも思ったりするが、世の中はわからないものだ。
 そう考えながら、普通に親に期待されたように生きているだけでは、想像もしなかったであろう言葉を使っている自分に驚く。
 手コキ、いわゆる手淫行為。手で男性の性器をしごいて、射精をさせる行為。
 普通ならば恋人相手にすること、だろうか。いや、本当の“普通”は本番だけを意味するのかもしれない。あまりにも私には、一般的な性知識が欠けてしまっている。なぜならば。

『今日もゆなちゃんの自撮りでシコりました!』
『毎日お世話になってます!!』
『素直に射精です』

 そんなコメントが、私の自撮り写真には日常的に付いていた。
 画面の向こうにいるのが実物の女性だと理解していて、かつ礼節をわきまえているなら、そんな言葉は吐けないだろう。
 だが、私のファンというのはそういう人たちだった。
 そして、私自身が自分が“オカズ”にされているという事実に、少なからず優越感にも似た充足を覚えていた。
 自己顕示欲が、下品な射精報告によって満たされていく。……倒錯的だとはわかっている。
 わかっているけど、私はそれに満足した。それでしか満足できなかった。

 

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