もしもの準備

「桐、ただいま!」
「ん、おかえり。連休明けの学校じゃが、だらけておった訳ではないのだろうな~?」
「だ、大丈夫だよ。そもそも学生にとって連休が歯抜けだったりするのは普通のことだし」
「ふふっ、そうかそうか。ちゃんと頑張ってきたのならよし、じゃ」
 大学から帰ってきた悠を桐は優しく迎え入れる。
 ただ、玄関の前にいくつかのゴミ袋が出ていたことに悠は違和感を覚えていた。
「もしかして掃除してたのか?」
「うむ。連休の後だからこそ、物の整理をしておくべきと思ってな。悠は本当、物を捨てるということができんからなぁ。何が悲しくてお菓子の空箱をあんなに置いておくのじゃ。用途もないと言うに」
「いやぁ……はっはっはっ」
「全て始末しておいたからな。後、古い雑誌もそこにまとめておいたから、置いておきたいものがあるなら、自分で取っていくんじゃぞ」
「はーい」
「もちろん、全部置いておきたい!はナシじゃからな?」
「ぎくっ…………」
「悠~?」
 桐は笑顔で詰め寄ってくる。
 見た目は幼いがしっかり“お母さん”をしている彼女に、悠はいつまでも頭が上がらない。
 そして正に本当のお母さんとして、彼が疲れて帰ってくるのを見越してお風呂の準備をしてくれていて、お風呂から出た頃には夕食を出してくれるのだから、大学生の一人暮らしが彼女のお陰で健康的なものになったのは言うまでもないだろう。
 ただ、家に“お母さん”がいるということは、当然そういった問題も起きる訳で。
「ん……?」
 テーブルの上に小さな紙の箱が置かれているのに気づいた。
 厚みもなく、ちょっとしたお菓子か何かが入っていそうな箱だが、そのパッケージに「0.05mm」という文字が書かれていることに気づき、思わず頭を抱えてしまった。
「き、桐……?」
「うむ、本の山の中に埋もれておったぞ。かわいそうに箱もひしゃげてしまっていてのぅ。物は大切に扱うんじゃぞ~」
「う、うん……」
 しかし、桐は平然とそんなことを言う。
「(桐、コンドームのことを知らないのかな……?)」
 非常に長い時間を生きる彼女だが、最近はあまり人間社会との関わりもなかったし、特に性的な知識というのは人間を外側から見ているだけでは中々得られないだろう。彼女の常識の中にコンドームが存在していなかったとしても、あまり不思議なことではない。
 そう思い、お風呂に向かおうとした悠だったが。
「のう、悠。失礼じゃが、それを使うアテがあるのか?」
「えっ!?」
「じゃから、コンドームを使う相手じゃ。妾が知る限りでは、そなたに彼女ができた素振りはないんじゃが」
「え、ええっと、桐さんはコンドームをご存知で……?」
 恐る恐る聞いてみると、彼女は溜め息をつく。
「当然じゃ。初めて知った時は、なるほど人は考えたものだ、と感心したぐらいじゃ。避妊はもちろん、性病も予防できると言うし、物が物ゆえにあまり大々的に取り上げられることはないが、偉大な発明の一つじゃろう」
「そっか……。いやまあ、確かに俺には必要ない物なんだけどさ。なんとなく買っておきたかったって言うか。……その、桐に色々と教えてもらって、俺も男としての自覚、みたいなものが生まれてきたみたいな……」
「なるほどのう」
 そう言う桐は、にやにやと興味深そうに笑っている。
「うぅ……絶対、そういう風に茶化されると思ったから言わなかったんだよ」
「いやいや、妾は茶化しておらんぞ。むしろ、我が子の成長を喜んでおるのじゃ」
「成長、ねぇ」
「うむ。喜ばしいことじゃ。とはいえ悠よ、見たところ全く封も開いてなかったようじゃが、試してみることもなかったのか?」
「あ、うん……なんかやっぱり、ちょっと照れくさい感じがして」
 そこまで言うと、遂に桐は吹き出してしまった。
「やっぱりバカにしてるだろ!?」
「いやいや、すまない。あんまりにそなたが可愛いから、思わず母性が爆発してしまったのじゃ」
「大爆笑っていう形で爆発する母性、嫌だな!?」
「仕方がないじゃろう、そなたがあんまりに可愛いのじゃから。……のう、悠よ。では妾相手に試してみてはどうじゃ?もちろん、知っての通りに妾は人との間に子を成せんのだから、避妊の必要はない。また、人の病気にもかからないから、性病の心配もないとなれば、付けてする必要はないじゃろう。しかし、一度もゴムを使ったことのない人間が、いざ使うとなって手間取っていては、格好が付かんからのう。とりあえずの予行練習をしておくのは大事じゃろう」
「え、えぇっ……」
 珍しく桐から求めてきたことに、悠は思わず胸が高鳴る。
 いつもはもっとこう、悠の方からどうしても我慢できないから!と桐にお願いをして、彼女が「しょうがないのう」と笑って相手をしてくれるのがこの二人の性交渉というものだった。
 だが、こんなにも積極的に桐が求めてくるのは不思議で……自然とモノも大きくなってしまう。
「ふふっ、もう準備はできたようじゃな。妾もちょうど、夕食の準備は終わったところじゃ。お風呂に入る前にして、一緒に入ろうか」
「う、うんっ……!じゃあ、お願いします……!」
 なぜか悠はかしこまってしまい、不思議な緊張をしながら下半身をさらけ出す。
 既に勃起したモノがピーンと勃ってしまい、改めてそれをまじまじと桐に見られるのがなんだか照れ臭かった。
「今更恥ずかしがるような関係かのう?」
「で、でもさ……」
「ほれ、早く付けてみるのじゃ。自分でやらんと勉強にならんじゃろう?」
「うん……」
 悠は慣れない手付きでコンドームを取り出すと、思ったよりもコンパクトにまとまっているそれを自分のモノに被せてみた。
「そーれ、一気じゃ。伸びるから安心じゃぞ?」
「わ、わかった……よいしょっ!」
 コンドームはむにーん、と伸びていって、すっぽりと彼のモノを覆い隠す。ライトな水色のコンドームで、なんだか出来上がったモノはソーダ味のアイスキャンディーのような雰囲気すらあった。
「さて、準備をしてもらったところ悪いのじゃが、妾としては割とその姿でお腹いっぱいとはいえ、全く体は出来上がっておらんのじゃ。……じゃから、わかっておるな?」
「うん……じゃあ、今日はさ」
「うん?」
「桐のおっぱい、吸わせてもらっていいかな?」
「うわっ……」
「えぇっ!?」
 なぜか思いっきり桐はジト目で睨んでくる。
「いや、もっとこう、てっとり早く濡らして挿入するかと思ってな……。いや、もちろん乳首も感じるんじゃぞ?しかし、こう、妾としてはいまひとつ盛り上がりに欠けるというか……」
「そ、そっか。ごめん」
「むぅっ……妾こそ、すまぬ。別に悠がおっぱい好きということはわかっておるのじゃ。……妾の小さなものも、それなりには愛してくれていることもな」
「それなりなんかじゃないよ。二次元は巨乳だけど、三次元は桐のも全然好きだから!というか、三次元は他はエアプだし!」
「それを断言されるのもそれなりに寂しいものなのじゃが……まあよい。ほれ、好きに吸ってくれてよいぞ?」
「うんっ……!んちゅぅっ、じゅるちゅううっ!!」
「んっ……!」
 話している内に上下ともに裸になった桐が、前屈みになって膨らみの乏しい胸を突き出してくる。
 悠はそれにすがりつくように、自分も身を屈めてむしゃぶり付いた。
「じゅるずるぅうううっ!ちゅぱっ、ちゅっ、ちゅるじゅるぅうううっ!!じゅるっ!ずるっ……!ちゅっ、ちゅれるぅうっ!!」
「んっ、ふぁああっ……!もう、がっつき過ぎじゃ……!そんなに下品に音を立てて吸われてはっ……はふぅっ!妾も、しっかり感じてしまうじゃろう……!んっ、んあぁあああっ!?」
「桐っ……ちゅるっ、ちゅぷるっ、ちゅるじゅるううううっ!」
「ふっ、んふぁああっ……!!」
 桐は激しく身をよじり、快楽から逃れようとするような卑猥なダンスを踊る。
 そうしている内に、膣口からはたらり、と愛液が溢れ落ちてきていて、彼女の体が発情してきているのがわかる。
「ちゅぷちゅううっ!ちゅっ、ちゅっるっ!ちゅずっ……ずるるううううっ!!!」
「ふっ、んぁあああっ!!もっと、もっと、じゃぁっ……!!」
「んむうぅううううっ!!!」
 反射的に桐は、悠の後頭部の腕を回して胸へと彼の口を押し付ける。
 悠も小さく可愛らしい乳首を激しくねぶり、跡が残るほどに熱烈なキスをして、感じさせた。
「んんっ……!ふっ、んぁああっ……!!」
 そして、桐は控えめな声を上げて、下半身をガクガクと痙攣させる。
「桐、イッたんだ」
「んっ、あぁっ……前戯で、しっかりイかせる必要もないと言うに……」
「でも、求めてきたのは桐の方なんだし……」
「ええい、言い訳するでないわ」
「ごめんなさい……」
 ぷんぷんと怒る桐は、しかし顔が真っ赤で、軽く泣き出してしまっていた。
「(桐、大人ぶるところが可愛いよな……。いや、すごい大人なんだけど)」
 愛する“家族”の愛らしい面にほんわかとしつつ、悠は彼女の股間にコンドーム越しのモノを押し当てる。
「んっ……久しぶり、じゃな……」
「うん……挿れるぞ……!」
「うむっ……ふぅっ!?んぁああっ……!!!」
 ずぷりっ、と水音を立てながらモノが入ってくる。
「ふっ、くぁああああっ!!!」
 相変わらず、桐の中は狭く、しかしながら伸縮性はあって、ぐっぽりと悠のモノを咥え込んでくれる。
 そして、膣壁全体を使ってぎゅうぎゅうとモノを刺激するものだから、あっという間にイッてしまいそうになってしまう。
「うっ、くっ、ううっ……!やっぱり桐の中、最高っ……!」
「ふっ、んんっ……!コンドーム越しでも、しっかり感じるのか……?」
「うっ、くぅっ!もちろんっ……!桐の気持ちよさは、こんなゴム越しになっても変わらないって!」
「はっ、ふぅうううっ!!!そ、そうかっ……。妾もっ……んっ、ふぁああっ!!そなたのを、しっかりと感じられるぞっ……!」
 久しぶりの挿入だったこともあってか、桐はピクピクと痙攣しつつ、必死に快楽の波に耐えているみたいだ。
 年上として、悠をリードしなければならないという意識があるから、みっともなく喘いでいけないと我慢しているらしい。そんな姿がまたいじらしくて。
「桐、もっと動くからっ……!」
「う、うむっ……!んっっ!?ひっ、ふっ、んぁああああっ……!!!やぁっ!!そ、そんな激しく動いちゃっ……!はっ、あくぅうううんっ!!」
 悠はしっかりと彼女の腰を掴み、腰を引いては打ち付けていく。
 ずるるぅううっ!と肉をかき分けて挿入していく感覚があまりにも心地よく、改めてオナニーなどとは比べ物にならないほど心地よいと感動してしまう。
「はっ、はっ、はぁっ……!!」
「ひふぅううっ……!はくっ、んっ、んぁあああっ……!!!あっ、あぁっ……!!!ふっ、ふぁああああっ……!!!」
 そして、一心不乱に腰を打ち付ければ、それによって快感を断続的に与え続けられる桐が、普段の落ち着いた彼女からは想像できないほど、卑猥に顔を蕩けさせて感じている。
 その事実がまた、気分を盛り上げて……。
「ふっ、ふぅっ……!」
「ひふぅうううんっ!あっ、やっ、いひゃああああっ……!!!あっ、あっ、あぁっ……!イくっ……!!!ひくぅううっ!!!あっ、あぁぁぁんんっ!!な、何度だって、イッひぇっ……!!!あっ、あぁぁぁああああんんっ!!!」
「うっ、ぐぅうううっ!!!」
 更に奥まで激しく突いてしまうと、桐はもう絶頂に歯止めが利かなくなって、膣内は常に振動し続け、その細かなバイブレーションが悠にもまた絶頂感を与えてしまう。
「うぅっ、くっ、出るっ……!!」
「ひぁああああっ!!!あっ、あぁっ……!中で、ビクビクっ……!ひっ、んぁああああああんんっ!!!!」
 遂に快楽が弾ける――しかし、精液はコンドームの中に出されるため、桐の小さな膣内を満たすことはなく、コンドームの先端を膨れ上がらせるだけだった。
「はぁっ、はぁっ……うぅっ……」
「んっ、ふぁぁっ……なんだか、そなたがイッたというのに、中に精液が広がらないのは不思議な感じじゃな……」
「うんっ……じゃあ、抜くから……」
「うむ。ただし、中にゴムだけ残ってしまわんようにな?」
「あ、そっか……」
 彼女の指摘を受けて、ゆっくりと慎重にモノを引き抜くと、コンドームが抜けてしまうこともなく、奇麗に引き抜くことができた。
 そして、コンドームの先端に思ったよりも多くの精液が溜まっているのが見える。
「こんなに出たんだ……」
「ふふっ、ティッシュに出した精液は見ているじゃろう?」
「いやぁ……やっぱり、本番で出す量は違うよ」
「そうか。……よし、ではそのコンドームは妾に渡してくれんか?」
「えっ?」
 悠は桐の言葉の真意がわからないながらも、言われるがままにする。
「では、んっ……じゅるるぅううっ……!」
「っ!?」
 桐はコンドームを咥えると、その中の精液を口の中へとぶちまけて……それを咀嚼し始めた。
「んじゅるっ……ちゅるっ、ちゅれるぅっ、ちゅぱっ、ちゅるぅううっ!!んじゅるっ、ちゅぱっ、じゅっ……ごくんっ……。けぷっ……」
「き、桐……」
「ふふっ、せっかくの精液なのじゃ、このまま捨ててしまってはもったいないじゃろう?」
「で、でも……」
 彼女の痴態を見ていて、悠のモノは再び、元の大きさを取り戻してしまっていた。
「んっ……今度はナマで、二回戦かのう?」
「う、うん、お願いしますっ……!」
 結局、お風呂に入るのはずるずると遅くなってしまい、夕食も予定よりかなり遅れてしまったのだった。