はじめての音

「おーい、そろそろ帰るぞ。陽が落ちてしまう」
「う、うんっ……!……あのさ、桐ちゃん。ぼくだけ楽しんじゃったけど……大丈夫?痛くない?」
「そうじゃなぁ……正直、まだ少し痛い気がするのう」
「や、やっぱり……!」
 行為の後。着衣を正した後、申し訳無さそうに彼が見てくる。
「しかし、な。これは幸せな痛みだと思う。この痛みが妾とお前の……愛の証じゃ。ただの子どもの遊びかもしれん。しかし、たしかに今日、妾とお前は結ばれたのじゃ。……本当に妾たちが結婚をできるという訳ではない。しかし、体と心が間違いなく通じていた。……お前も、そう思うじゃろ?」
「う、うんっ……ちょっと難しいけど……ぼくは桐ちゃんが大好きだよ。それは間違いない…………」
「ふふっ、まだまだ坊やには難しかったかのう?」
「き、桐ちゃん…………」
 そうやって笑って。二人で手をつないで帰った。
 まだ膣内には精液が残っている感覚があり、膣口からは精液が垂れている心地がしたが……むしろだからこそ、今日の特別さを感じられて嬉しかった。
「さて、また明日、な。…………何度でも言うが、今日のことは秘密じゃぞ?誰かに話したらもう二度と会ってやらんからな?」
「う、うんっ……!桐ちゃんが大好きだから、秘密にしてる……」
「ふふっ、そうかそうか。ならば妾もずっと、お前の傍にいよう。ずっと、な」

 結局、彼と行為をしたのはその一回きりで。それからは普通の友達として過ごした後、彼が青年になる頃にはもう、妾は彼の目の前からいなくなっていた。
 しかし、その日の約束の通り、彼が幸せな天寿を全うするまで。
 妾はこの村にいて、彼らを見守り続けていた。

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